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ストーリー展開は「梨泰院クラス」をほぼ踏襲も役者の演技レベルがあまりに違いすぎた【六本木クラス第1話】

©テレビ朝日

 いよいよ注目の「六本木クラス」が始まりました。全体的な印象としては、演出やセリフに関しては「梨泰院クラス」をほぼ踏襲。キャストも竹内涼真がパク・セロイの髪型をまねしたり、楠木優香(新木優子)や長屋龍河(早乙女太一)といった主要キャストもそれぞれオ・スア(クォン・ナラ)、チャン・グンウォン(アン・ボヒョン)に見た目の雰囲気を含め似たようなキャラクターに作り上げていました。ただ、チャン・デヒ(ユ・ジェミョン)と長屋茂(香川照之)はまったく別物でしたね。香川の演技を見たら完全にコメディーに見えてしまった(笑)。

 ちなみにテーマソングもGAHOの「시작(Start)」の日本語リメークバージョン。やっぱりこのドラマにはこの曲が必要なんです。第1話だけで判断するのはなんなんですけど、「梨泰院クラス」を見た者としては、どうみても本家を超えるのは無理といった感じかなといった印象です。

重要なシーンもかなりカット

 さっそく詳細部分についての感想を。チョ・イソ(キム・ダミ)のカウンセリングシーンで始まった「梨泰院クラス」に対し、「六本木クラス」は、麻宮葵(平手友梨奈)のクラブでのダンスシーンから登場。平手のナレーションが棒読み感ありあり。先行き不安な滑り出しです。

 そして、「梨泰院クラス」は約70分で全16話、「六本木クラス」は約50分で13話なので、ストーリー的にかなり端折られることは想定にあるのですが、オープニングタイトルのシーンに登場したのが、宮部新(竹内涼真)、麻宮葵、内山亮太(中尾明慶)、長屋龍二(鈴鹿央士)の5人。一方の「梨泰院クラス」では6人。トニーに当たる役が「六本木クラス」には登場していません。「梨泰院クラス」を見ていない人にはネタバレになってしまうので詳しくは書きませんが、トニーは終盤のストーリーでは結構重要な役どころなんです。もし、トニーに該当する人物が登場しない場合、あのストーリー展開をどう結び付けるのか気になります。この辺はその時になったら書いてみようと思います。

 ドラマ冒頭のパク・セロイが転校する前のチャンスン高校在学時代のシーンもカットされていました。夜間学習をさぼったため水が入ったバケツを頭の上に掲げさせられる罰を教師から受けたセロイは、そのバケツの水を頭からかぶってしまう。その後にナレーションが流れるのですが、これは彼に片思いする女子生徒(ガールズグループLABOUMのソルビン)がラジオ番組に投稿した手紙をパーソナリティーが読み上げている設定。その内容は、「彼はイカれてそうに見えて実はまっすぐな男だ」「3年間友達もいなかったが、なぜか孤独には見えなかった」という内容。これによって主人公パク・セロイの性格を把握できる大事なシーンだと思ったんですけど…。まぁ、なくてもドラマを見ていれば、自然とわかってくる部分なので、はしょっても影響がないとの判断なのかな?

 警察官を夢見る主人公が警察大学校の体力テストを受けているシーンも「六本木クラス」ではカット。ちなみに警察学校の試験を受けに行く途中、宮部新と楠木優香、パク・セロイとオ・スアが初めて出会うシーンもあるのですが、パク・セロイはこの時に足をけがしてしまう。体力テストでは持久走があるのですが、足を引きずりながら必死に走り続ける姿に、担当試験管も「勝気なヤツだな」と温かいまなざしを送ります。結果としては「オール10点」の評価を受け、合格を勝ち取る。これも負けん気の強いパク・セロイの人となりを示してくれた場面だったわけですが…。

 こんな感じで、ストーリーは基本的に忠実に展開させてはいるものの時間的な制約のため、ところどころ「梨泰院クラス」にあったシーンをカットしてつなぎ合わせた感じ。となると、やはり比較する対象は、役者の演技力になってしまいます。結論から言うと、正直言って比較することさえ憚られるほど差がありすぎました。完全に”レべチ”です。「六本木クラス」を見ることによって、韓国の役者たちのレベルの高さに改めて感心させられます。もちろん、これはあくまで個人的な感想ですので、違う意見もあるかと思います。あしからず。

演技の基礎からして差は歴然

 まず主役から話を進めたいところですが、長屋ホールディングス会長、長屋茂を演じた香川照之と長家の会長チャン・デヒを演じたユ・ジェミョンの比較から。「梨泰院クラス」のユ・ジェミョンは、実年齢よりかなり年上の人物を演じたわけですが、まったく違和感を覚えないほど、綿密に役を作りこんでいました。初登場の瞬間から空気がピンと張りつめるような緊張感が画面を通じてストレートに伝わってきましたし、一言で言うならば「凄み」とでも言うのでしょうか。セリフ、表情、細かい仕草…どれをとっても圧巻の演技です。私の場合は「梨泰院クラス」と「ヴィンチェンツォ」を立て続けに見ていたので、あまりの変貌ぶりに驚かされたものです。韓国では、出演作品によって、まったく別人のように役柄を演じ分けることができる俳優のことを「カメレオン俳優」と呼びますが、まさにその言葉がピタリとあてはまる演技です。

 対する香川照之。リアルタイム検索のタイムラインを見ていると、絶賛する声も非常に多いのですが、はっきり言って私には、先程も書いたように、コメディにしか見えませんでした。絶賛している方の多くは、「土下座」というセリフを、大ヒットドラマ「半沢直樹」と重ね合わせて歓喜しているようです。まぁ、楽しみ方は人それぞれなので、それが良いと思うのであれば、その意見は否定しません。演技に関して言えば、彼の声質もあるんでしょうけど、「凄み」も「貫禄」もまったく感じられませんでした。なんせコメディーに見えてしまうのですから。

 パク・セロイを演じるパク・ソジュンと宮部新を演じる竹内涼真については、正直なところ、竹内には申し訳ないのですが、「役者としてのレベルが違い過ぎる」としか言いようがありません。一番の違いは竹内は、「宮部新を演じている」ようにしか見えないのに対し、るパク・ソジュンはパク・セロイを演じているのではなく、パク・セロイそのものに見えるのです。つまり、演じていることすら意識できないほど役柄と役者が完全に同化している。ちなみにパク・ソジュンはソウル芸術大学演技科の卒業。しっかりと演技を学んでから俳優になっており、基礎からして違うわけです。

 竹内について言えば、発声の悪さも気になります。セリフがボソボソこもったような感じ。表情の演技に関してはそれなりに頑張ってはいますが、繊細な表現力においては歴然とした差があります。

 代表的なのが、「梨泰院クラス」にあった、パク・セロイが転校先の高校でクラスメートをいたぶるチャン・グンウォン(アン・ボヒョン)を殴ってしまい、父親のパク・ソンヨル(ソン・ヒョンジュ)共々、校長室に呼び出されたときのやりとりの場面。

 チャン・デヒ会長からグンウォンに対して土下座で謝罪することを求められたセロイ。「過ちを犯したら罰を受けるべきでしょう。父にそう教わりました。それから人は信念を持って生きろとも言われました。クラスメイトがいじめられ先生は黙認しました。見ていられず止めました。でもやめないので殴りました。先生の前では我慢すべきでしたね。僕が悪いので、罰を受けます。でもグンウォンには謝りません。申し訳ないと思わないので」と拒否。「退学になっても謝れない?」と迫られても、「それが僕の信念で父の教えなので 一生貫くつもりです」と突っぱねる。

 頑ななセロイの姿勢にチャン会長は「困ったな。では私も打つ手はない。パク部長の考えは? なぜ黙っている?」と父パク・ソンヨル(ソン・ヒョンジュ)に矛先を向ける。これにソンヨルは「息子は世間知らずの子供です。私の子とは思えないほど…」と切り出す。その言葉に戸惑いの表情を見せるセロイ。だが、続いて口を突いた「カッコいいです」という予想外の言葉に、パッと目を見開き、目をパチパチさせながら視線を不規則に動かす。父が「信念を持って行動し責任も取るといいました。なのでこれ以上私が言うことはありません」と続けると、チャン会長は「君もまだ青いな。私と気まずくなって会社で働けるか?」と迫る。「これは僕の」と割って入るものの父は「退職します 会長」と即答。その姿に泣きそうな顔になり、顔を背けるセロイ。やりきれなさそうな表情でこぶしを握りしめる…。

 第1話の中でも最もパク・ソジュンの演技力が光ったシーンと言えるかもしれません。この一連のシーンでのパク・ソジュンの表情演技は圧巻の一言。感情の動きを繊細かつ鮮明に表現。目の動きはもちろん、喉ぼとけの動きさえも、それを補完しています。

 同じシーンは「六本木クラス」でも出てきます。

 長屋茂から土下座を要求された新が、「悪いことをしたら罰を受けるべきだと思います。父からそう教わりました。ただ信念を持って生きろとも言われています。クラスの子がいじめられて先生が見て見ぬふりをしました。だから止めました。でもそれでもやめないので殴りました。でも先生の前では我慢すべきでしたね。すいません。でも、彼に対して謝ることはできません」と土下座を拒否。頑張って演じているものの一本調子で感情のふり幅はあまりない。

 「それで退学になるとしても?」と聞かれても、「ハイ、それが信念で父の教えなんで」と決意を曲げない。苦笑いしながら長屋茂が新の父・宮部信二(光石研)に対して、「困ったな。私も打つ手がない。宮部部長、どう思う? どうして黙ってる?」と意見を求める。すると、「こいつは、世間知らずのどうしようもない息子です。まさか私の息子がこんな奴だったなんて…」と言い放つ。表情を変えず聞き入る新の瞳に涙がにじむ。続けざまに父親が「カッコいいです」と笑顔でいうと、父親の方に顔を向ける新の眼から涙がこぼれている。「信念に従ってやってことならこれ以上私から言うことはありません」と息子の意思を尊重する父を見つめる新。「ここで私と気まずくなってもうちの会社で働けるのか?」という長屋茂に対して信二が「いえ、退職します。会長」。その言葉に顔をこわばらせ父の方を向く新。「今まで大変お世話になりました」と頭を下げる父親とともに校長室を出ていく。

 「梨泰院クラス」を見てさえいなければ、「竹内涼真もなかなか演技できるじゃん」と思えるところですが、「梨泰院クラス」を見ているだけに、明らかに演技力の差が際立つシーンとなってしまったようです。

 このほか新木優子、早乙女太一、光石研、相川京子役の稲森いずみといった面々については特筆すべきことはなし。まぁ良くも悪くもないといったところ。「梨泰院クラス」と「六本木クラス」の決定的な差は、脇役の役者たちさえも、韓国の役者たちはセリフ回しから演技までしっかりできていること。会長秘書、高校の担任や校長たち、刑事役もしかり。なぜにここまで差が出るのか不思議です。K-POPアーティストを見てもわかるように基礎が徹底的に叩き込まれているんですよね。俳優も同じ。多くの役者たちが大学で演技を学んだり、演劇の舞台に立って磨きをかけています。また、韓国の場合、演技力がなければ容赦なくネットで標的にされることもあるので、役者たちの覚悟が違うのかもしれません。

 続いては個別のシーンで気になる部分をピックアップしてみます。

飲ませない酒の味を息子に聞く父

 まず、父は退職、息子は退学となる校長室でのやりとりを終え自宅に戻った信二と新の夕食のシーン。「形だけでも付き合え」と言って新のおちょこに酒を注ぐ父。だが、実際に飲もうとしておちょこを口に近づけた新の手をはたき、「バカ、形だけって言ったろ。お前はまだ18なんだから」と止めさせる。手を叩かれた瞬間、酒が新の顔にも飛び散る。右手の甲でぬぐう新。

 この次の信二のセリフが、「で、どうだったんだ」。「えっ」と戸惑う新に「酒の味は?」と聞くのだが、どう考えてもこの流れで「で、どうだったんだ?」という聞き方は、酒の味を問う意味と受け取ることはできない。そもそも酒を飲もうとして止めた新に酒の味について聞くこと自体が意味不明です。一応、新は口元に飛び散った酒の少しだけなめて「甘い」と答えてはいるが、あの程度舐めたくらいで酒の味がわかるとも思えないが…。

 続いて宮部信二のひき逃げ事件を担当する刑事が、葬儀場に来て事件の資料を渡した中に、ひき逃げ車両のナンバーを見た優香が長屋龍河の車であることを新に告げるシーン。それを受けて新は立ち上がり、龍河のもとに行くわけだが、いきなり入院先の病院を訪れているが、どうやって龍河がいることを知ったのだろう? 「梨泰院クラス」では、パク・セロイは一度、学校に足を運び、いないことを確認してから、病院に向かっている。もっともなぜグンウォンが病院にいるのがわかったかについては描かれていないため、こちらもおかしいといえばおかしいんですけどね。

 その後、病院の庭で雨が降りしきる中、傘付きのテーブルで菓子を食べているで龍河を見つける。怒りに任せて龍河を殴り続ける新。そしてレンガを手にして意識を失っている龍河に叩きつけようとしたところで、駆け付けた刑事(緒形直人)が空に向けて警告射撃すると、新は動きを止める。このシーン、刑事(緒形直人)は、2人の至近距離で撃ってるんだけど、普通は走ってきて叫びながら「やめろ!」とか言ってから撃つでしょう。しかも刑事2人と制服警官2人、そして優香の5人で必死に走ってきたはずなのにまったく息も切れていない(笑)。まぁドラマだから仕方ないか。

 ちなみに刑事や優香たちは、なぜ龍河がこの病院にいることがわかったんでしょうかね? 「梨泰院クラス」では、心配になったスアが刑事に連絡を取ったようで、刑事の車に乗ったスアがセロイに電話しているクァンジン病院にいることを聞き出しているシーンがあるので納得できるんですけどね。まぁこれもドラマだから仕方ないか(笑)。

 ちなみに優香の「そんな奴のために犯罪を犯さないで」というセリフも気に入らない。「犯罪」とは罪を犯すという意味。いわゆる「重言」のひとつですね。「歌を歌う」ように、簡単に置き換えられない場合、重言ではないとされるケースもあり、「犯罪を犯す」もそれに含まれるとの意見もありますが、今回の場合は「罪を犯さないで」でも済むわけですから、あまりいいセリフとはいえません。これは余談でした。

 第1話では平手友梨奈のシーンがほとんどなかったので、次回はメインになる予感。抜群の演技力を持つキム・ダミが演じたチョ・イソに当たる役をどのように演じるのか、楽しみにして待ちたいと思います。

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